デキる営業の準備術(営業のプレパレーション)

戦略的な準備

はじめに ――営業の準備の必要性とは

あなたは営業をおこなう前の準備をしていますか? 「準備」というと何やら面倒な気もしますが、営業(商談)をおこなう前には、商談の準備をしておく必要があります。これは、「優秀な営業パーソンなら必ずやっている」とお考えになってもよいでしょう。

準備をおこなわずに行き当たりばったりで営業してしまうと、想定外の質問をされたときなどに焦ってしまい、結果的にお客様のご不満につながってしまうリスクがあります。その結果、成約率が下がります。したがって、準備は絶対におこなってください。

例えば、ゲームの大会でも対戦相手の戦い方を事前によく調べるプレイヤー(大会参加者)がいます。これは、対戦相手のことを知ることによって、「どのように振る舞えばよいのか」、「相手の戦い方の弱点」などを事前に理解し、大会の本番に備えるのです。

もし、対戦相手の下調べをしていなければ、勝率(成功率)は大幅に下がってしまうことでしょう。それほど、準備という行為は重要であるということを理解してください。

対戦相手ではなく「お客様」になりますが、営業にも同じことが言えます。営業の準備をしなければ、成約率は下がります。したがって、営業(商談)の準備をしておくことが大切です。

では、どのような準備をすればよいのでしょうか。ここでは、デキる営業の準備術について説明します。

まずはお客様のことを知る

まずは、営業先(お客様)のことを知る必要があります。なぜなら、お客様のことを知らないまま商談がスタートしてしまうと、事前に調べておけばわかるようなことを質問するたびに「こんなことも知らなかったのか!」とお客様を不快な気分にさせてしまうリスクが高いからです。

また、「営業先のことをよく知らない」ということは、「何に困っているのか」、「何を売れば満足していただけるのか」、「どのようなアイスブレイク(商談前の会話)をすればよいのか」といったことが予見できないということになります。これでは営業パーソンとして失格レベルです。

では、具体的に「どのような方法」で「どのようなこと」を調べておけばよいのでしょうか。答えは、インターネットで営業先のホームページやSNS(Twitterなど)を閲覧して、情報収集をおこなうことです。

例えば、会社の従業員数、社長のお名前、資本金、代表的な商品など、企業のホームページに書いてあるようなことは、ある程度把握しておきましょう。個人に対して営業する場合は、どのような方かをSNSで調べておくとよいでしょう。もしかすると、お客様との共通の趣味を発見できるかもしれません。

もし、営業先の情報を調べる手間を省いてしまい質問攻めをしてしまうと、次のようになります。

準備をしない営業パーソンの実態

これを実際にやらかしてしまうと、大変なことになります。このようなひどいことにならないように、営業先のことを事前に調べておく必要があるのです。お客様の情報を知っておくことで、お客様をイライラさせることも呆れさせることもなく、コミュニケーションがとることができます。したがって、「お客様のことを知る」ということを念頭に置いてください

しかし、特に個人営業の場合は、調べたことを話しすぎるのは控えてください。あなたがお客様のSNSを確認したことを露骨にアピールすると、「ストーカー気質があるのでは?」という印象を与えてしまいかねません。

例えば、「お客様は今年の9月2日のCHILD METALのライブに行かれたようですね。私もファンなんです。あと、その次の日には富士登山もされたようですね。私はですね、3回も登りましたよ。それと、MIXED JUICE CORPORATIONの新作のRPGも気になりますよね!」などと言ってしまうと、(悪い意味で)驚かれてしまう可能性が高いです。

お客様のことを知っておくのは良いですが、特に個人営業の場合は、知ったことを話しすぎないようにしましょう

今回の営業の目標を決める

お客様のことを知った後は、今回の営業の目標も決めておきましょう。目標を決めることで、後述の「商談シミュレーション(目標に向けて「どのように進行していけばよいのか」という営業の流れをシミュレーションすること)」ができるようになります。

例えば、「お客様との信頼関係を強固なものにするために誠実に対応し、その後にお客様の悩みごとを確実に聞き出す」などです。初日の目標は「信頼関係を築く」という程度で良いと思います。初日で「契約してもらう」といった高い目標の設定はおすすめしません。

なぜなら、初日で契約していただけるケースは少ないからです。「会ったばかりの人の商品は買いにくい」といった心理に似ている理由です。

したがって、初日の場合は「信頼関係を強固なものにする」、「ヒアリングをていねいにおこなう」といった初日にふさわしい目標を設定することを推奨いたします。そして、2日め以降は「良いご提案をしてお客様に期待していただく」、「お客様のご満足のためにヒアリングをさらにおこなう」などの進んだ目標に切り替えると良いでしょう。

事前にシミュレーションをする

今回の目標を決めた後は、営業のシミュレーションをおこなうことが大切です。シミュレーションをおこなう方法は、お客様と商談をする場所へのアクセス方法、想定されるQ&A(質問と回答)のやりとり、商談の流れ(商談シミュレーション)などが挙げられます。

例えば、お客様に「このサービスの値段は他社のほうが安いですよね?」と質問された場合は、「実は、当社のサービスには、他社にはない付加価値があります。付加価値については、こちらの資料をご覧ください(中略)。」といったように、対策をあらかじめ立てておきます。

ここで、お時間がない方のためにも「商談シミュレーションの型」を紹介しておきます(これは我流であり、やり方には個人差があります。)。これは7ステップで完結します。

(1)アイスブレイク(商談前の会話)を展開する。
例:私はこの近くの高校を卒業した者なのですが、どの高校だと思いますか?
(2)ヒアリング(お客様の課題の聞き出し)をする。
例:~関連でお困りのことはございませんか?
(3)お客様の困っていること(課題)を確認する。
例:~で困っていらっしゃる……ということですね。
(4)自社の製品やサービスでできることを説明する。
例:そこで、~を利用していただくと効果的です。なぜなら~。
(5)不満な点などをお客様から聞き出す。
例:いかがでしょうか? ご不明な点やご不満な点はございますか?
(6)ステップ(5)でYESならステップ(2)へ。NOならステップ(7)へ。
(7)初日を想定していない場合は、契約書を見せて練習終了。

ここで注意していただきたいのは、営業の目的は、お客様にご満足していただく商品やサービスを適切に紹介することですから、できるだけていねいに商談をおこなうことを意識しながらシミュレーションをしましょう。これを雑にやってしまっては、効果があまり得られないだけではなく、時間の無駄になってしまいます。

また、「独り言」のようにシミュレーションをしていると、周囲の人にドン引きされるかもしれませんので、TPO(時間、場所、場合)を考慮したうえで練習することを推奨いたします。

そこで可能であれば、お仲間に「商談ロールプレイング(ロープレと略されることが多いです。)」の依頼をするとよいでしょう。商談ロールプレイングとは、人間に協力してもらうタイプの商談シミュレーションで、ある人間を「お客様」だと仮定して商談をおこなう「商談練習」のことです。

1人で商談シミュレーションをするよりも、仲間と商談シミュレーションをするほうが練習の効果は大きいので、ぜひ、お仲間に協力してもらってください。頑固なおじさんの役やうるさいおばさんの役など、個性的な役をしてもらうと面白いかもしれませんが、常識はずれなシミュレーションは効果を下げてしまうので、お気をつけください。

このように、事前にシミュレーションをおこなうことによって、営業(商談)をスムーズに進めることが可能となります

決定権を持つお客様を見極める

契約や購入の決定権を持つお客様(キーパーソン)を見極めることによって、的確なプロポーザル(提案)ができるようになります。なぜなら、決定権を持たないお客様に「契約したい」と思っていただいても、実際に商品の購入やサービスの契約を決定するのは、「決定権を持つお客様」だからです。

個人に対する営業の場合は、決定権を持つお客様はすぐにわかります。しかし、法人(グループ)に対する営業の場合は、決定権を持つお客様がすぐにはわかりません。なぜなら、商談のはじめから決定権を持つお客様がやって来ることは稀(レアケース)であり、窓口の方に対応していただく場合が多いからです。

したがって、営業前にその法人について調べておき、決定権を持つお客様を推測しておく必要があります。そのためには、その法人の規模の大きさや組織の構成をよく確認することが重要となります。

例えば、あなたが社員数25人の中小企業に対して営業をおこなうとします。このとき、事前に営業の準備をするわけですが、まず、営業先の企業の規模は「小さい」といえます。規模の小さい企業の場合、決定権は「社長」が持っている場合が多く、社長に向けた営業をおこなう必要があることがわかります。

営業先が大企業の場合は、人事部の部長が決定権を持っていることが多いです。これは、社員数が多くなると「部署」を設ける必要が生じてくるからです(部署がない企業もあります。)。

しつこいようですが、営業前には、決定権を持つお客様の心に響くような(その営業先の企業に満足していただけるような)営業にするためのシミュレーションをしておく必要があります。そのために、まずは決定権を持つお客様を見極めておく必要があるのです。

このように営業の準備をしておくことで、次段階の(アイスブレイクを含む)ヒアリングにつなげることができます。備えを万全にして、良いスタートダッシュを決めるようにしましょう。

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